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![]() 3行アメリカ Daily Life 2004 特別編・どうする胃潰瘍!? ![]() |
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(ひ)の胃潰瘍日記 2.24.2004<プロローグ> -- 2004年になった1月下旬、きゅんきゅんと胃が痛み出した。まずい。実は胃が痛むのは初めてではない。この痛みが実は潰瘍らしいというのは分かっていた。しかしちょっと今回のはつらいぞ。ネットで「胃潰瘍」を引いてみる。なに?胃潰瘍で胃を全摘した人もいるではないか。げげっ。どうしよう??? 次に記憶があるのはアメリカに来て数ヶ月後、つまりちょうど3年前。しばらくはうんうんとうなってやせがまんしていたが、前回の胃潰瘍の症状と同じことに数日経ってやっと気が付いた。ラッキーだったのは、ちょうど(ま)がアメリカにやって来る頃だったので、これ幸いと(ま)にガスター10 を持ってきてもらうように頼んで服用。また数日もしないうちに症状はすっかりと改善した。以後約3年間、ビールが浴びるように飲める夢のアメリカ飲んべえ生活を心行くまで堪能し続けた。 その間、1度か2度は、痛んだことがあるように思う。しかしいずれもガスター10を1、2錠飲んだら治っていたので大して気にしていなかった。そして2003年12月、また痛み出した。折しも1週間後にはジャマイカに出かける予定、ジャマイカではオールインクルーシブのホテルで「Red Stripe」を思う存分にたらふく飲む手はずだった。そんな時に胃が痛いなんて言っている場合ではない。この1週間はビールをがまんして、ガスターを飲んで、しっかりとジャマイカに備えよう。 ガスターですぐに治るだろうという期待は今回は裏切られた。確かにガスターを飲むと症状は治る。しかし次の日にはまた痛むのだ。結局ジャマイカ出発前日まで飲み続けた。残りは10錠。ジャマイカにいる間の分はあるけれどちょっと心もとない残量だ。しかしとりあえずカバンに大事に詰めていざ出発。 さてさて、そのジャマイカでは、全く胃は痛まなかった。最初の数日こそ心配していたものの、楽しすぎてそんなことはすぐにすっかり忘れてしまったのだ。結局ガスターは1錠も飲まなかった。そして思い通りに Red Stripe を毎日浴びるように飲んだ。美味しかったな〜。後にも考察するが、やっぱり胃潰瘍の原因はストレスにもあるようだ。普段全くストレスなど自覚していない(ひ)だが、これだけジャマイカで無症状だったことを思うと考慮しないわけにはいかない。 そしてジャマイカから帰ってきて数週間たった後に、この痛みがまた戻ってきた。そして今回のはちょっとまずいと自覚できるくらいにきゅんきゅんと痛い。ガスターは日に日に減っていく。ついに(ま)の実家の義母に泣きついてしまった。 「もしもし。ガスター10を、送ってください」。 これが今までの痛みと最も違った点は、痛みによって日々の活動に支障が出てしまい、普段と違う行動を余儀なくされたことだ。仕事しようにも馬力が出ない。空腹になったら痛むので常に胃の中に何かを入れようという行動に出る。おかげで体重がまた増えた。牛乳をがぶがぶと飲む。ここが牛乳が安いアメリカでよかった。とにかく、こんなことは初めてだ。 仮にも医療に携わる(携わっていた?)人間として、自分がどんな病気にかかってもそれを冷静に受け入れられる自信があった。そうでなければ医療従事者として失格とすら思っていた。しかし今回は、間違いなくビビリあがって平静を失っている自分がそこにいた。ネットで「胃潰瘍」を引いてみる。なに?胃潰瘍で胃を全摘した人もいるではないか。げげっ。どうしよう??? 聞けば治療法が確立する前にはどうやって治していいか分からない、悩ましい病気だったとか。ちょっと前に読んだポアロの小説には、あるご婦人の死因が胃潰瘍とあり「んなアホな」と呆れたがまんざら嘘でもなさそうだ。胃潰瘍で胃の全摘、というと少々大袈裟に聞こえるかもしれないが、10年ほど前にはまだれっきとした治療法だったという。胃癌の時などに下部3分の1または3分の2を摘出するビルロート1法・2法という手技があるのは知っていたが、それも適用されていたらしい。潰瘍部位からの出血によって真っ黒な便が出るという。(ひ)のはまだそうではないから<食事中の方すみません>さすがに摘出はないだろうと情けない話だがこの時心底安心した。自分の胃にこんなにも愛着を感じたのも初めてだった。 さすがに穿孔するまでほったらかしておくと手術をしないわけにもいかないだろうが、現在、潰瘍に伴う摘出術がほとんど行われなくなったのは、胃酸の産生を抑えるH2ブロッカー(ガスター10ね)という特効薬の出現と、ヘリコバクター・ピロリという原因菌の同定によってほとんどの症例で治癒が期待できるようになったからだそうだ。たかだか10年前には手術をしていたかと思うと、医学の進歩は本当に早いと感心させられる。それにひきかえ歯科医学では、、治療法は20年も30年も変わってないんじゃないかい? そうこうしているうちに義母からの愛のガスター速達便も届き、症状も少しは改善して冷静に自分の状態を観察できるようになった。いいことだ。また、同じ階のラボで働く内科医のY村さんにも相談したら、日本から持ってこられていたお薬や胃潰瘍の病態・治療法に関する文献をくださりました。こんなに良くしていただいて、本当に感謝、心からありがとうございます。Y村先生によると、ガスターに代表されるH2ブロッカーに加え、最近ではプロトン・ポンプ・インヒビターというさらに有効な特効薬が開発されたそうだ。 さらに驚いたことに、このプロトン・ポンプ・インヒビターがアメリカでは薬局やハリスチーターで一般販売されているのだ。日本ではまだ処方薬だが、それだけ需要もあるのだろう。そういえば「1日24時間1錠で Heartburn はゼロになるよ〜」というコマーシャルは見覚えあったな。ちなみにHeartburnとは逆行性食道炎、胃酸の過分泌に起因する病態という意味では胃潰瘍と似ている。 ガスター10の箱を読んでみると、「3日服用して症状が改善しなかったら医師に相談すること。12日間を越えて服用し続けないこと」とあるが、Y村先生によるとガスターやプロトン・ポンプ・インヒビターでの胃潰瘍の治療では、症状自体は消えていても6〜8週間は服用し続けるのが基本だそうだ。あぶねーあぶねー、ガスターの箱を鵜呑みにしてまたやせがまんするところだった。オレのY村先生、どこまででもついて行くぜ〜! そのオレのY村先生も「ホットな話題」と一押しするヘリコバクター・ピロリは、胃潰瘍ひいては胃癌発生の原因菌としてほぼ断定されたバイ菌ちゃんらしい。食中毒のキャンピロバクター・ピロリとは違うようです、たぶん。血液もしくは内視鏡でひっかいてきた検体で抗原の有無を確認し、ポジティブだった場合には2種類の抗生物質を服用して除菌するとか。この除菌自体は2週間ほどの連続服用で終わってしまうそうだ。2週間お薬を飲んだらかわいいマイ胃ベイビイが元気になってくれるわけです。良い世の中になったものだ。お医者さまの皆さん、ありがとうございます。 「本当は胃の中を覗いてみるのが一番なんですけどね」とオレのY村先生が指摘するとおり、(ひ)の目下の夢は日本に帰国後、消化器内科を受診して内視鏡を飲み、ピロリ菌を除菌してもらうこと。変な話と笑うなかれ、まず悪い状態を治して、この先はレディを扱うように胃のことをいたわってあげようとやる気マンマンなのでございます。 (ひ)の場合、こんな胃潰瘍の状態を起こしてしまった原因は、1にも2にも学部学生から大学院生時代にかけて暴飲暴食を続けてしまったことだと確信している。心臓は強いが胃腸が弱い、と確かに統計的に明らかな家系にも一因があると言えないこともないだろうが、あの暴飲暴食に比べたら微々たるものだ。特に野球をしていた学部学生時代はどんな量でも飲み食いできた。アメリカに来てからもトータルにすると恐ろしい量のビールを飲んでしまった。逆に今まで何年も音をあげずによくぞがんばってくれたとさえ思う。そんな健気なマイ胃ベイビイに、もうこれ以上つらい思いをさせるわけにはいかない。 幸い、料理上手な(ま)が毎日胃に優しいメニューを考えてくれている。本当にありがとうな。「人生に不可欠なものトップ5」の一角だったビールも以来全く飲んでいない。別に止めたわけではないが、治療中の今は飲もうという欲求から起きないから不思議なものだ。これまた胃のことを考えるとタバコまで吸わなくなってしまった。これも止めたわけではなく今でも時々欲求が襲ってくるが(タバコの依存性を痛感させられる)、良い機会なので吸わないですんでいる間は吸わないでおこう。コークもだめ。なんだか好きなものを根こそぎもがれているようだ。意外なことにアメ玉も種類を問わずなめると症状が悪化した。ストレスは全く自覚することなく3年間仕事をしていたと思っているが、ジャマイカでのことを考えるとやっぱり否定できないのだろうか。これ以上ストレスをかけないためにのんびりしてしまったらもう働くことがなくなってしまうような気がする。 とにかく、この数週間、胃のことで何かと考えさせられた。もう「胃博士」と呼ばれてもおかしくないかもしれない。「胃はおしゃべりな臓器」と言うが、それだけに大事な臓器なのだ。人の幸せを考えるとき、食事というのは大きな割合を占める。それが愛する人との食事ならなおさらだ。食事を美味しくいただける、というのはこれ以上ない幸せなのだ。その幸せのためにも健康な胃でいることは何はなくとも必須である。もちろん、健康な歯でいることも超重要なのでお忘れなく!(ひ) |