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3行アメリカ Cultural Difference・カミカゼと21世紀のテロリスト



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カミカゼと21世紀のテロリスト 11.2002

それは、(ま)のコミュニティーカレッジでの授業中に起こった。EFLという英語のクラスで、レベルは大学入学のための英語といったところ。教科書も大学1年生用を使い("BRIDGEING THE GAP COLLEGE READING" Brenda D.Smith)、毎週その出版社が作成した、教科書の内容に基づく小テストを受験する。普段はマークシート(選択式)のみの回答だが、先週クラスでカンニング問題が発覚したため、その対応に追われた担任のバーバラが突然「今日は、記述式の課題Bもやる。」と言い出した。このバーバラ(推定年齢60歳前後)、ワシントンDC育ちでアフリカで教鞭をとったこともある国際派を自称する割には、異文化に対する失言が多いことで生徒の間では有名だ。

そして、課題Bは何と『第二次世界大戦中の1944年に日本で組織されたカミカゼ特攻隊と、21世紀のテロリストの相違点を述べよ。』というものだ。最初に「カミカゼ特攻隊は、戦争も終盤になり旗色の悪くなった日本軍の幹部○○によって考え出された作戦で、飛行機に片道分の燃料を積んで、、、(中略)、若い兵士は進んでこの任務についた。」などという説明文がついており、それを読んで、まずは「似ている」「違っている」と自分の立場を明確にし、どこが似ているのかもしくは違っているのか、例をあげて説明するのが、この課題に求められる回答だ。

答え合わせの時間になった。バーバラは真っ先に、(ま)以外のもう一人の日本人に「どう思う?」などと答えを求める。他の生徒の答えもすごかった。真っ先に出たのは「両方とも、飛行機を使っている。」(おまえは小学生か!と思うが、でもアメリカの教室では答えることに意義がある。)その他、何てことはない回答がいくつも出てきたが、(ま)は理性的に聞いていた。が、ある生徒の「両方ともサプライズ・アタック(奇襲)だった。」という答えにバーバラが深く頷いて、黒板にでかでかと「サプライズ」と書いた時に、(ま)は疑問を持った。

「あの、戦争中なんだから、奇襲ではないと思います。」という(ま)に「何言っているの、サプライズだったわよ。」と憤慨するバーバラ。「戦争中なんだから、敵が攻撃するのは当り前でしょう。アメリカもそれは分かっていたはずだと思います。」と(ま)。「そりゃあ、軍のトップは知っていたかもしれないけど、ほとんどの人は知らなかった。」とムキになるバーバラ。ははーん、彼女は大きな勘違いをしているな、と気づいた(ま)は冷静に言ってみた。「パール・ハーバーは何年ですか?」「1941年に決まっているでしょ。」「カミカゼは1944年に考え出された作戦だと、この説明文には書かれています。だったら、論理的に考えて1941年のパール・ハーバーに、カミカゼはいません。カミカゼは戦争が始まったあとの1944年に出来たのだから、これはサプライズにはならないと思います。」バーバラはそれでも主張した。「とにかく、パール・ハーバでのカミカゼはサプライズだったの!」

私は大変興味深かった。ちゃんと大学を卒業し、教職という知的な職業に長年ついているアメリカ人であっても、パールハーバーや同時テロという事柄になると、目の前の簡単な数字も検証できないくらい感情的になるという事実を、目のあたりにしていた。

結局押し問答で15分ほど時間が経ち(特別なことではなく、いつも誰かのどうでもいい質問でこれくらいの時間が無駄になる。今日の場合は、それが私というだけ。)、いいかげん(ま)も腹が立ってきた。「じゃあ、日本の原爆もサプライズですか。先生の答えがイエスなら、私もカミカゼをサプライズと認めます。」と言ったら、「あなたがそれで納得するなら、それでいいわ。」とこの場はおさまった。

さて、この話には続きがある。当日夜バーバラからEメールが来た。内容は「あとで調べたら、カミカゼは第二次世界大戦後半のものでした。私がなぜ勘違いをしていたかと言うと、同時テロ以降、多くのマスメディアで今回のテロとカミカゼを同時に論じていたからです。」というものだった。まあ、ちゃんと調べて訂正したことは評価しよう。出来れば、私の説明を冷静に聞いて、授業中に気づいて欲しかったけど。

さて、ここで多くのアメリカ人が陥っている間違ったロジックがある。
1)同時テロ=パール・ハーバー(共に奇襲。アメリカの一般的見解。)
2)最近の自爆テロリスト=カミカゼ特攻隊(共に自身の生命を犠牲にする)
3)同時テロ=自爆テロリスト
4)パールハーバー=カミカゼ(間違い!)
1)2)3)は2001年9月以降、ずっとマスコミで言われてきたことだ。ゆえに、おのずと4)も関連して思えるのだろう。これは日本人にとっては、特攻隊で亡くした若い命を思えば許しがたい間違いだけれど、アメリカ人にとっては小さなことなのかもしれない。

ここから学べるのは、ある国の人にとっては、とても重要なこと、とてもデリケートな話題も、他の国の人にとってはただの「知らないこと」、知っても「多少の間違いがどうした」となること。私があきれたのと同じように、バーバラも「同時テロという許しがたい行為の前に、小さな数字なんか問題じゃないわ。」と思っていたかもしれない。

バーバラには、「月光の光」(深夜の学校に、ショパンのピアノ曲「月光の光」を弾きに来た特攻前夜の若者の話。映画にもなった。)の話でもメールで書いて送ってやろうかと思ったが、その日は気力を使い果たしていたので、やめた。ちなみに、課題Bの配点は、相違点を3つ書けば100点で、(ま)は2つだったので67点だった。疲れた一日だった。(ま)




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