ハリケーンズ、偉大なるチャレンジの軌跡

４大プロスポーツの中で、（ひ）（ま）の住むノースカロライナ州トライアングルエリアに唯一本拠地を構えるのが、アイスホッケー（NHL）のカロライナ・ハリケーンズです。なんと2001-2年シーズンは地元ファン狂喜乱舞のスタンレーカップ・ファイナル進出。特に第３延長までもつれにもつれた第３戦は、江夏の２１球、柔道山下涙の金メダル、我がＱ大歯学部野球部オールデンタル７連覇に並ぶ（ひ）の歴代感動スポーツ名場面に超上位ランキング入りです。そんな激闘も日本での報道は新聞の片隅にスコアだけ。それではあまりにも寂しいので友人に宛てたメールの内容をここで公開。

・レギュラーシーズン：東カンファレンス中地区で堂々のディビジョン優勝。

・プレーオフ第１ラウンド：昨年は第２ラウンドで破れたＮＪ相手に４勝２敗で見事雪辱を果たし、第２ラウンド進出。この第１ラウンドで特筆すべきはオリンピック出場による過労などで調子を落としていたエースＧＫアーベに代わり、ゴールを死守したカロライナ唯一の黒人選手、ケビン・ウイークス。連戦３０セーブ以上の魂の守りで、ハリケーンズに勢いの風を吹き込んだ。

・プレーオフ第２ラウンド：第１シードのフィラデルフィアを大番狂わせで破り勝ち上がってきたモントリオール・カナディアンズと対峙。１勝２敗で迎えたアウェーでの第４戦、劣勢の0-3から第３Ｐで３点を奪い（最後の３点目は終了間際キーパーを引っ込めた６人攻撃で得点）、続くオーバータイムでサヨナラ勝ちの大逆転勝利。ここで負けていたら相手がリーチだっただけに価値ある大勝利。以後オーバータイムに入ると負けないと言うカロライナのジンクスがここに確固たるものとなる。この勝利で波に乗ったハリケーンズは、続く２戦を5-1、8-2と爆勝に次ぐ爆勝で連勝し、反則・ラフプレーの目立つ狡猾な古豪相手に堂々と渡り合って４勝２敗のカンファレンス・ファイナル進出。

・カンファレンス・ファイナル：相手はラボの同僚レン君の故郷、トロント・メイプルリーフス。１勝１敗で迎えたアウェーでの第３戦、試合開始早々にカロライナ主力ＦＷオニールの目を不運にもパックが直撃するアクシデント。見る見る腫れてきても片目状態のまま渾身のプレーを続けるサムライ・オニール。同点で迎えたオーバータイム、頼れるキャプテン・フランシスからのパスをその片目のサムライ・オニールが奇跡の一撃でゴールに突き刺し見事な勝利。波に乗ったカロライナは下馬評を覆し、４勝２敗でトロントを退けて堂々のスタンレーカップ・ファイナル進出。

・そしてスタンレーカップ・ファイナル：開始前からぶっちぎり優勝の呼び声が高かったデトロイト・レッドウイングスが次のターゲット。相手にとって不足無し！と鼻息も荒いハリケーンズは敵地での２戦を１勝１敗（１勝はやっぱりオーバータイム）とまずまずの成績を残し熱狂的ファンの待つ地元カロライナに戻る。続く第３戦、1-1のしのぎを削る接戦から第３Ｐ中盤に勝ち越し、このまま2-1で試合終了かと思われた矢先の残り50秒に痛恨の（デトロイトにとっては会心、というより「まぐれ」の）ディフレクション・ショットを浴びてまさかのオーバータイム突入。以後両者とも譲らず試合はもつれにもつれ何と第３オーバータイムも終了間近。時計の針は午前１時４０分。戦前の下馬評ではデトロイト４セット（つまりMaximum）に対してカロライナは３セットしか「選手交代セット」を持っていなかったためその選手層の薄さが指摘されていたが、５時間４０分にも及ぶ死闘の末についにその懸念が的中したのか、最後は半ば息切れするかのように痛恨の勝ち越しゴールを許してしまう。デトロイトの選手にも喜ぶ体力すら残っていない程のまさに死闘だった。同時にカロライナのオーバータイム神話もここに途切れる。続く第４戦も落としたカロライナは後のない第５戦、1-2の接戦から終了間際に怒濤の６人攻撃で勝負をかけるもエンプティ・ネットを揺らされ1-3で試合終了。長かったハリケーンズの偉大なチャレンジもついにここに終結した。１勝４敗と数字の上では大きく負け越したものの、その試合内容は夢と希望を与え多くのファンの心を打つまさに偉大なチャレンジであった。（ひ）