3行ジャマイカ Daily


やっぱり毎日、何かが起こる!

第2の人生

ジャマイカのモンテゴベイ空港に降り立った。飛行機から出たとたんに押し寄せる熱風は常夏のカリブ海に来たことを思い知らされるに十分で、また同時に「(ひ)の書斎」でも紹介しているスーツケースのステッカーが2枚ほどはがれてしまったほどの湿気だった。これだけでもインパクトは十分だったのだが、ホテルへ向かうバスへと案内されると、またさらに大きな衝撃を受けることに。アメリカからの到着便に合わせて駐車場で待っていたのは、外装に何と日本語「近畿交通」「石見観光」などと書かれている観光バスの数々だったのである!!
ジャマイカは元イギリスの植民地で、現在でもエリザベス女王のもと Commonwealth Country の一員だ。そしておそらくは植民地時代の名残りであろう、道路も左側通行なのだ。そんなジャマイカでの観光産業には欠かせないバスを調達しようと考えたとき、同じ左側通行・右ハンドルで、信頼性は世界で折り紙付きで保証されている日本製のお役ご免となった中古のバスを輸入しようと考えるのは極めて自然なことだと気付くのに多くの時間はかからなかった。
その日本製の観光バスに乗り込むと、懐かしいことに遠足で出かけるのに乗っていたバスの内装そのまま。座席番号の上には「まど」「つうろ」と書かれ、天井にはマイクのコードを吊すレール、通路に面した座席にはたたまれた補助席が付いている。今にも可愛いバスガイドのお姉さんが白い手袋をして「ハイみなさーん、こんにちはー」と出てきそうな雰囲気だった。
聞けば消防車や救急車なども日本製の中古を輸入してそのまま使っているそうだ。確かに大型車両や特殊車両は新車だと高いもんね。日本では現役を引退しても、ジャマイカで第2の人生を送っている彼らの姿には妙な懐かしさを覚えました。
さて、乗客のアメリカ人達は、やっぱり左側通行が怖いのかトラックなどとの離合の際にはビビりあがっていた人も多数(もう(ひ)(ま)もこの中に含まれます)。補助席を見たのは初めてと見えて興味深げにいじっておりました。一つだけ残念だったのは、各座席に灰皿が設置されており掃除もしていないのかタバコ臭さが抜けていなかったことでしょうか。(ひ)


波間の海坊主

ホテルに到着した夕方、薄暗くなったビーチを散策していた。と、波間に浮かぶ黒い頭が一つ。「あの人、よっぽど泳ぐのが好きなんだね。」とふたりで話した。翌朝も早くから浮かんでいる。そして、彼が我々に手招きをするのだ。気づいたことに、ビーチの外れ、敷地の終わりにフェンスがあり、その向こうにはボロ小屋が数件並んでいる。そして、数人の人が声を張り上げて「こっちへおいで!」と手招きしている。どうやら、おみやげ物屋らしい。見れば、藁で作ったバッグ、Tシャツなど見るからに安物のお土産が軒先にぶら下がっている。よーく見ると、フェンスには小さなドアまでついている。無許可で黙認のホテル付属ショッピングセンターと言ったところか。そして”波間の海坊主”は、この店の出張販売要員だったのだ。観察すると、仕事の内容は以下の通り。波間に浮かんで客を待つ。ホテルのゲストがビーチまで来ると、手招きをして注意を引く。で、ゲストが近づくと持っていた防水ポーチの中から貝殻で作ったアクセサリーを取り出し、見せ、販売する。但し、波打ち際よりホテル側には絶対に足を踏み入れない。つまり、ホテルの敷地(砂浜)に入ってはいけないルールなのだ。
後日、ボートに乗って沖からその”ショッピングセンター”を見る機会があった。ボロ小屋がひとかたまり、ホテルの敷地にへばりつくようにして建っている。ボートを操縦するホテルの係員に聞くと「フェンスを越えて行けば、Tシャツやお土産や、ブレード(髪の編み込み)をしてくれる店があるよ。」と屈託無く教えてくれる。別に敵対しているわけではなさそうだ。ホテルのセキュリティー(保安員)も、フェンス越しに彼らと世間話しているのが見える。「共生」というより「寄生」なのだろうけど、よく出来たシステムだ。「でも、あの彼はホテルの敷地内の海にいるよ。」と”波間の海坊主”について質問したところ、「海は誰のものでもないからね。」とイキナリ加山雄三ばりのご回答。なるほどね。そんな会話を知る由も無く、海坊主君はその後も終日波間に浮かびつつ、のんびり「顧客」を待っていた。(ま)


夜のお洒落

リゾート地に行くことが決まってから、(ま)が最初に準備したものは「ビーチで読む本」。ポールサイドでのんびりするのに、本は欠かせません。軽めの英語の恋愛小説や、日本語の名作など。サガンの「悲しみよ、こんにちは」をビーチで読むと、これまたいい感じ。さて、今回もうひとつ準備したのは、何と「ちょっといい服」。普段の旅行はワンピース一枚で何でも済ませるのだが、今回はドレスコードのあるレストランや夜のパーティーにも行く予定だったので、服を少々多めに持参。とはいえ、リゾートでリラックスでしょ、こんなの無駄になるのでは? と疑問を持ちつつも、いざ出発。
さて、結果はと言うと、持っていってよかった! 昼間は水着や短パンでカジュアルに過ごすゲスト達も、面白いもので、夜になるとバシッと決めて再登場。男性は襟付きシャツにスラックス、女性は肌の露出が多いサマードレス。(男性は肌の露出が少ないほど正装、女性はその逆。まあ限度はありますが。)という訳で、(ひ)もスーツ、(ま)もドレスもどきに例のメイクで華やかに(?)登場。中には何でもカジュアルで済ませている人達もいたけれど、せっかくならこんな部分も楽しみたい。ちょっといい服、背伸びして、二人でレストランへ、バーへ。服のおかげで、どんな場所にも気後れせずに出入りできたので、本当によかった。それにしても、リゾートを楽しむためにはいろんな荷物が必要だ。ゲストのトランクがやたら大きいのも、何だか納得。(ま)


見上げてごらん

(ひ)(ま)の暮らすノースカロライナは、星空がとてもきれいです。森に囲まれ照明が少ないから当然のことだけれど、特に郊外のラリーおじさんの家に行った時などはあまりの降るような星空に息を呑んでしまったことを思い出します。他にも、昨年・一昨年の夏にイエローストーンやブライスキャニオンに行ったときには、天の川がくっきりと見えて<最初は雲かと思ったほど>、深いため息をついたものです。
さて、ジャマイカではさらに星空がきれいでした。海に浮かぶ島なので、照明の少なさはアメリカ以上だもんね。まさに降るような星空。どれくらいにきれいだったかというと、あまりに見える星の数が多くてオリオン座が埋もれてしまっていたほど。そのへんの草むらで鳴いている虫の声と合わせて(なんと電子音のような音でピロピロピロ〜と鳴く虫もいました)、ジャマイカの夜の情景として深く心に残っています。(ひ)


お金を落とす滝

「ジャマイカに来てダンズ・リバー滝に登らないのは、パリに来てエッフェル塔を見ないのと同じだ。」とガイドブックに書いてあったので、滝登りツアーに申し込んだ。1人25ドル也。段々になった高さ180mのダンズ・リバー滝を、水着でずぶ濡れになりながら登るというもの。多くの観光客が訪れるため、お互い手をつなぎ「人間の鎖」を作って少しづつ進んでゆく写真が数多く紹介されている。しかし当日、ホテルのツアー集合場所に行って見ると(ひ)(ま)1組だけ。「他のホテルでも人を拾うんじゃない?」という期待も裏腹に、現地に着いても2人だけ。さっさと専属のガイド君がつき、(ひ)(ま)だけのツアーが始まった。ホテルがオールインクルーシブだった為すっかり忘れていたが、ここは抜け目のない観光地ジャマイカ。ありとあらゆるものにお金がかかるのだ。滑らないゴム底靴レンタル1人5ドル。貴重品を預けるロッカー8ドル(後で3ドル返金)。ガイドには1組当たり5ドルのチップが要求されていたが、我々2人だけなので申し訳なくって8ドル渡す。「送迎付き」ツアーのはずも、バスの運転手は「チップは気軽に置いていってくれ」と要求。で2ドル。極めつけは、ガイドのマルコスがハンディカムで撮っていた我々の滝登りビデオ。(ひ)(ま)独占映像だったので、つい買ってしまった。25ドル也。どうやら滝登りをしたのは、コイではなくカモだったようだ。楽しかったけど。(ま)


おいしい観光業

ダンズ・リバー滝のガイド、マルコスと話していた。(ひ)(ま)だけの1時間弱のツアーを終えて、「1日何回くらいツアーするの?」「うーん、1回。たまに2回。」えっ?「何か他の仕事しているの?」「ううん。これだけ。」じゃあ、1日の労働時間は1時間?? 頭で彼の稼ぎを計算して、納得。ガイドをする観光客1組につき、5ドルのチップが懐に入る。今回はたまたま1組だけだったが、普段は4組程度、多ければ10組くらい世話することもあるだろう。そうすると、1回で20ドル、多いと50ドルの稼ぎになる。ジャマイカの1週間の最低賃金が37ドルだから、1回で1週間分の(最低)賃金の半額を稼ぐことになる。これは効率がいい。日本円に置き換えると、1回で17500円を稼いでいるようなものだ。(最低賃金7,000円×5日=35000円、その半額)どうしてこんなことが起きるのか? それはアメリカのドルが極端に強いからだ。アメリカ人が国内の感覚で払う金額が、ジャマイカの人達にとってはとてつもなく大きな金額になる。ジャマイカにこれだけリゾート・ホテルが多いのも、アメリカ人が少し贅沢して払うドルで、多くのジャマイカ人を雇い、サービスを充実させ、それでも豊富な利益が見込めるからに他ならない。

分かりやすいように、日本円感覚で考えてみよう。<ジャマイカ最低賃金37ドル=日本最低賃金35000円とすると、ジャマイカでの1ドルは、日本での約1000円と同じ価値を持つ。> 絵葉書1枚売って千円(1ドル)、貝殻で作ったアクセサリーひとつ売れば一万円(10ドル)の儲けになる。そりゃあ、安い時給でこつこつ働くより、海に終日浮かんでアクセサリーの一つでも売ったほうがいいよな。こうして観光客相手に働いて楽に儲けられる仕事ばかりでもないのだろうけど、「あくせく働く」という言葉とは程遠い勤務形態だ。「今日はお客は少なかったけど楽だったし、8ドル貰ったから、まあいいやー。」とばかり午前10時にして仕事を終え、さっさと帰途に着くマルコス君の後姿を、呆れたような、ほんのちょっぴり羨ましいような気分で見送った。

(ちなみにチップの金額5ドルというのは、ツアー申し込み時に指示される額です。ツアー料金を払った上に、かつサービスの良し悪しに関わらず金額の決まったチップが要求されるのは変な話です。観光客は完全なカモ扱い。ま、それもジャマイカ。)(ま)


もしかしたら世界初 12.25.2003

10日間のジャマイカ滞在を終え、アメリカに帰ってきました。2004年1月で切れるビザが効いているうちに、と企画した今回の旅行でしたが、問い合わせてみるとジャマイカを含むカリブ海諸国へは、J1・J2ビザが切れていても有効な DS-2019 があれば行けるそうです。とは言っても全ての入国管理官がこんなことを知っているとは思えないし、空港ではどの国から戻ってきても同じ窓口から入国することになるので、やっぱりビザがあるに越したことはありませんね。
(ひ)(ま)の場合、一つだけ気になっていたのは、再入国の時点でビザの期限が残り1ヶ月だったことでした。実際入国の時には、管理官のおばちゃんから案の定「あと1ヶ月で帰らなきゃならないじゃないの」と突っ込まれましたが、ヘタに延長の手続きをしているなどと言うと逆に怪しまれそうだったので適当に言葉を濁しおきました。残りが1ヶ月だろうと有効なビザを持っているのだ、文句は言わせんぞ。
と、まあそんなわけで問題なく入国しましたが、管理官も少しは怪しいと思ったのか、2004年1月5日から導入されるはずだった指紋と顔写真を、世界に先駆けて取られてしまいました。とても簡単に取れるような機械が導入されていて、待ち時間に影響を与えることは少なそうです。(ま)は指紋を取られたこと自体が初体験で少し複雑な気分だったそうですが、(ひ)は大学の RI センターの指紋照合ドアで毎日していたのと同じ操作だったので何とも思わずスキャンもすぐに済みました。写真の時にもつい微笑んでカメラ目線を決めてしまったし、もうちょっと緊張感があってもよかったかな〜?(ひ)


今の心境

去年の冬に、ドミニカ共和国までバケーションに行ったベルギー人ザビ&サン夫妻の息子ジャスティンくん(3歳)は、帰国後「5分でいいから、戻りたいよう。」と泣いたとか。それを聞いた(ひ)は一言「カワイイー!」
さて、我々も帰国から数日がたち、ジャマイカの楽しい思いでが次々に蘇ってくる。「10日間でいいから、戻りたいよう。」と訴える(ま)を横目に、「今度は(ま)のヘソクリで行くなら構わないよ。」と(ひ)。随分な違いようである。それにしても、ああ、心はまだジャマイカ。(ま)




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